厚生労働省委託事業 がんのゲノム医療 従事者研修事業

Q&A

2020/10/25(日曜日)にWEB開催されたがんゲノム医療コーディネーター研修会におけるQ&Aを掲載しております。

質問項目をクリックすると回答が表示されます。

1.がんゲノム医療の基礎知識(林秀幸先生)

Q1:細胞のがん化は正常な対立遺伝子に何らかの変異が生じて、従来の機能を発揮しないときに生じるのであって、量アレルに同じ変異が生じでなくても、機能の変化が生じるとがん化するのでしょうか。
A1:がん関連遺伝子はがん遺伝子(がん化のアクセル)とがん抑制遺伝子(がん化のブレーキ)に大きく分類されます。がん遺伝子の異常が原因としてがん化する場合は原則として片アレルのみの異常でがん化を来たします(がん遺伝子が両アレルに存在する個体は受精卵の段階で通常排他されます)。一方、がん抑制遺伝子に関しては片アレルのみの異常では通常がん化を来たさず(もう片方の正常アレルがブレーキの役割を果たすため)、両アレルに異常が生じて初めてがん化を来します(これがいわゆるtwo hit理論になります)。
Q2:遺伝子パネル検査の適応上、標準治療がない患者が対象ですが、そういう患者の場合、予後が悪いことが多いです。より早期から遺伝子パネル検査を導入した方が有益かと思うのですが、何故認められていないのでしょうか。
A2:本来であればより早期からの遺伝子パネル検査の導入が有益と思われますが、本邦においては国民皆保険である以上、コスト面を考えると現状では対象を絞らざるを得ないかと思います。シークエンスコストの低下により、将来的に早い段階での遺伝子パネル検査が認められるようになることを期待しています。
Q3:連携病院で勤務しておりますが、エキスパートパネルの資料作成を連携病院がメインで作成し、中核病院が支援しますと話をされました。実質的に難しいと会議でもありましたが、通常のエキスパートパネルで先生のところではどのようにされていますでしょうか。
A3:慶應義塾大学のエキスパートパネルではActionable遺伝子異常など遺伝子情報に関する報告書は中核病院でレポートを作成しておりますが、遺伝子情報に基づく推奨治療に関しては各連携病院の担当医にエキスパートパネル用の事前資料作成をお願いしております。
Q4:検査の実施時期の判断につきまして、保険で切られることを懸念して、実施が遅くなってしまうとの話を聞きます。結果が戻るまでに(TAT)2か月以上期間を要することを考えますと当該がん種のガイドライン上、最終ラインに入る前に実施することも可能でしょうか。
A4:より早い段階での遺伝子パネル検査が望ましいですが、査定などのことを考えると現状ではガイドラインに従い、最終ライン開始と同時期に検査をorderして頂いた方が宜しいかと思われます。
Q5:生検検体等の少量の検体しかパネル検査に出せる検体がない場合、何か工夫している点等があれば教えていただきたいです(提出する未染スライド枚数を増やす以外で)。
A5:当院では検体を検査に出す前に病理医が事前チェックし、提出検体での検査実施困難が予測される場合は予め再生検を提案しております。
Q6:生殖細胞系列遺伝子バリアントがある場合は、体細胞遺伝子も異常として検出されるのでしょうか。
A6:生殖細胞系列遺伝子バリアントは基本的には片アレルのみの遺伝子異常となります。もう片アレルに後天性に体細胞遺伝子異常が加わることで2 hitとなり、発がんを来します。したがって同一遺伝子における生殖細胞系列バリアントにそのもう片アリルの体細胞遺伝子異常が加わることで発がんを来します。
Q7:スライド33Pの記載に関しての質問です。括弧書きに「但し、患者生存中の場合、結果説明は代理人に対してでも可」とあります。代理人とは、ご家族でも可能との認識で良いでしょうか?本人のみとこれまで認識していたので、確認したいです。
A7:本人が結果を聞ける場合は本人に説明するのが望ましいですが、そうで無い場合は結果説明は代理人対してでも可能です。
当院では検査の同意取得時に予め万が一の場合に備えて、結果を伝えて良い家族などの代理人の名前を知らせてもらっております。

2.バイオマーカーに基づく分子標的治療(釼持広知先生)

Q1:MSIとTMBの違いを教えてください。
A1:MSIは、DNAにおける塩基対合エラーの修復(ミスマッチ修復)の状態を推察することを目的としています。ミスマッチ修復に異常を修する場合、ミスペアや単純な繰り返し配列の挿入・欠失を引き起こされます。そのため、連続塩基領域や複数塩基の繰り返しからなるマイクロサテライト領域においてその影響は顕著となり、繰り返しの塩基数のばらつきが高い頻度で生じるマイクロサテライト不安定の状態が引き起こされます。
一方で、TMB (遺伝子変異総量)は腫瘍の遺伝子変異の多寡を評価しています。全エキソン解析の場合は、単純に検出された総変異数を有効なシーケンス領域長で割った値(変異数/Mbase)となりますが、遺伝子検査パネルの場合はシーケンスを行っている領域がせまいため、その影響を排除する補正が行われTMB値が出されていると考えられます。TMB値が高い場合、その原因は上記のミスマッチ修復異常だけではありません。尚、MSI、TMBともにhighの患者では、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できます。
Q2:遺伝子パネル検査結果を参照した際に、TMB-Hと判断できるスコアの一般的なカットオフ値はあるでしょうか?
A2:F1CDxでは当初TMBのクラスわけが、High ≥ 20; Intermediate 6-19; Low ≤ 5とされてきましたが、現在は数値表記のみとなっています。また、各遺伝子検査パネルについて基準となる値が示されていないのが現状です。米国ではTMB 10以上の固形がんに対して、ペムブロリズマブが承認されていることからも、10が一つの指標になると考えています。
Q3:リキッドバイオプシーの利点と欠点、また現状について教えてください。
A3:利点としては、腫瘍組織が十分量なくても、遺伝子検査が可能であり、繰り返し検査が可能な点があります。欠点としては、腫瘍組織と比べて感度が落ちる点になるかと思います。
Q4:パネル検査はNGSであり、コンパニオン検査ではリアルタイムPCR(例えばNSCLCのEGFR)もあると思うのですが、陽性率としてどれぐらいの差があるのでしょうか?
A4:F1CDxの添付文書によると、EGFRエクソン19欠失変異およびエクソン21 L858R変異に関する同等性試験(PCR法との)では、陽性一致率は98.1%(106/108)、陰性一致率は99.4%(153/154)です。
Q5:TMBの評価は、ペアマッチドのNCCのほうがF1CDxより精度が高いのでしょうか?
A5:NCCオンコパネルとF1CDxでは、解析方法の違い(マッチドペアの有無)に加えて、TMB推測のアルゴリズムが異なることが推測されることから、単純にTMBの精度を比較することは難しいように思います。

3.遺伝性腫瘍、germline findingsと遺伝カウンセリング(平沢晃先生)

Q1:HBOCの場合、死亡率の低減は化学療法やリスク低減手術でのみ図れるのであって、乳がん検診での早期発見は低減につながらないのでしょうか。
A1:HBOCのサーベイランスと対策型の検診とではそもそも趣旨が異なります。対策型のがん検診はat riskの人を念頭においたものではありません。
Q2:F1CDxにて、小杉班提言にて「必ず確認検査を実施する」に分類される遺伝子にLossが指摘された場合、どのように対応すべきでしょうか?SNVとindelのみの検討で、十分なのでしょうか?
A2:小杉班提言にて「必ず確認検査を実施する」のは現在BRCA1およびBRCA2で、Lossで確認が望ましいケースがあります。
Q3:Secondary findingsとGermline findingsどっちの言葉をこれから使っていけば良いでしょうか?
A3:提示したとおりACMG2020ではSecondary findingsという言葉は使用されず、Germline findingsとなっております。PGPV,PGVの語も今後は用いられていきます。本来であれは学会・団体等で用語集の作成が必要であると考えております。
Q4:遺伝性腫瘍の原因遺伝子異常について、その頻度に人種差はどれくらいあるのでしょうか?また、遺伝性腫瘍を持つ患者に対し同じ適応する薬剤を使用した際の効果や副作用について、人種差はあるのでしょうか?
A4:遺伝性腫瘍の原因遺伝子病的バリアント保持者の頻度に民族・集団での差は報告されていいます。有名なものとしてアシュケナジー系ユダヤ人でBRCA1/2病的バリアント保持者が高頻度であることが知られています。一方、遺伝性腫瘍を持つ患者に対し同じ適応する薬剤を使用した際の効果や副作用については、1つの遺伝子では説明出来ないことも多いと考えます。
Q5:患者さんに検査結果を伝える前に亡くなり、遺伝性腫瘍に関する結果が得られていたために、家族に連絡が必要な症例がこれまで数回ありました。このような時は、どれくらい時間が経過してから、家族に連絡をとるとよいのでしょうか。
A5:患者さん・家族によると思いますが、僕はなるべく早くお伝えしています。
Q6:貴院では、対象者へのサーベイランスはどのような方法で行われておりますでしょうか?費用に関すること(保険・自費)、プログラム等。
A6:岡山大学病院はこちらをモデルにしています。https://cgm-okayama-u.jp/hboc-ch3/
Q7:F1CDx実施説明時に遺伝性腫瘍について説明すると、患者本人より配偶者が子どもへの遺伝を心配して強い関心を示すことがあります。結果説明時にも、actionable遺伝子変異が見つからない場合でも、「遺伝性のバリアントがなかったからよかった」と、患者本人の心情を無視する言葉が聞かれることもあります。
上手な説明はありますでしょうか。
A7:生殖細胞系列の遺伝情報を「知るメリット」について初診時からお伝えするようにするのが重要であるかと思います。
Q8:一般的に、BRCA1/2病的バリアント保持者の二次予防サーベイランスにおいて、病変が発見された場合(再発時)その治療法として手術が可能であるならば、化学療法より手術が有効なのでしょうか。
A8:一概には言えませんが、がんが発見された場合は原則としてまずはがん種に応じた標準治療として考えることになります。
Q9:閉経前にRRSOを行う場合、不妊手術の側面も持つと思いますが、夫婦双方の同意が必要になりますか?
A9:妊孕性温存の希望がないことがRRSOの条件になります。ただ夫の理解は重要になります。
Q10:乳がんや卵巣がんの場合、リスク低減手術を受ければ、原発巣を切除するので、抗がん剤などの治療がいらないと考えればいいでしょうか?
A10:一概には言えませんが、がんが発見された場合は原則としてまずはがん種に応じた標準治療として考えることになります。
Q11:平沢先生の講義におけるRRSOの実施に配偶者の同意が必要かという質問への回答についてRRSO実施の意思決定に際して家族と話し合うということと、同意書に対する配偶者の署名の話が混在していたのが気になりました。同意書への配偶者の署名は不要です。平沢先生が仰っていたのは事前の話し合いを家族でしっかりやってください、というご趣旨であると理解しておりますので、事後のフォローで誤解のないようにお願いできればと思います。(武藤香織先生より)
A11:了解いたしました。

4.医療倫理と個人情報保護(武藤香織先生)

Q1:イギリスの裁判の事例において、父親の検査から判明した遺伝的リスクを父親の要望を尊重して娘に伝えなかった医師が訴えられたとのことですが、恐らく医師のみでなくコーディネーターなどの医療者も患者へ説明等の支援をしていたと思います。今後、日本においてコーディネーターの責任はどのようになるとお考えでしょうか?
A1:コーディネーターにも医師と同様に患者の情報に関する守秘義務が課せられています。今後、遺伝的リスクをめぐる守秘義務の考え方が変更される見通しはありませんので、お答えが難しいですが、医師の説明補助という位置づけが変更されない限り、コーディネーターが医師と同等の説明責任を負うことは考えにくいです。
Q2:がん遺伝子パネル検査の結果開示の相手の連絡先として空欄であった場合、連絡先等はいつ頃までを目処に誰が確認したら良いでしょうか。質問内容から、都度、患者さんの言動からキャッチしていくとのことでした。説明補助時以外にも、コーディネーターはどの程度の頻度で関与するのかご教示下さい。
A2:空欄を埋める作業の確認頻度は決まっていません。また、医療機関ごとにコーディネーターの働き方や役割は異なるため、その関与の程度も一概には言えません。しかし、治療方針の変更など今後の見通しを考えるような機会に、医師やコーディネーターから空欄の扱いについて意思の変更が生じていないかを確認されてはいかがでしょうか。
Q3:がん遺伝子パネル検査によって知ることのできた情報に関して親族への影響が見込まれる場合、はじめは患者本人が知らせてほしいと考えていたが途中で変更したいと考えることもあるように思います。実臨床においてはこのような同意事項の確認はどういったタイミングで、何回程度行われるものなのでしょうか?
A3:特にタイミングや回数の決まりはありません。「一定期間ごとにお考えに変わりはないか見直していきましょうか」と提案なさるのはいかがでしょうか。定期的でなくても治療方針を変更するときなど、重要なタイミングにそれとなく持ち掛けて、「以前こういうご意思でしたね」と確認する方法もよいと思います。
Q4:当院では当該検査終了する前に患者さんが亡くなることが数例起きております。その場合は検査の結果を家族に説明する義務があると思われますか?検査の結果を取る際に伝えても良いご家族の氏名と連絡先をお聞きしているので、結果を伝えるべきなのか迷うケースがございます。ご教示いただければと思います。
A4:亡くなられた患者さんの家族に伝える法的な義務までは課せられていないと考えられます。しかし、①高い費用をかけた検査結果が無駄になる、②患者さんが守秘義務の解除の許可をしている、③後になって、「検査結果が出ていたのに知らせてもらえなかった」というトラブルを回避する、といった理由から、淡々と検査結果をお伝えする医療機関も少なくないようです。
Q5:患者本人が遺伝性腫瘍について家族への説明を希望している場合、家族がその内容を知らないでいる権利は守られるのでしょうか。このような場合は、どのように対応すればよいのでしょうか。
A5:知らないでいる権利は、遺伝学的検査を受けるかどうかや、その結果を知るかどうかに関する権利と考えられています。患者の遺伝性腫瘍という病名やその血縁者への影響を知らないでいる権利とは考えられていません。ただし、患者が希望しているからといって、患者を飛ばして医療者からいきなりお伝えすべきではなく、ご家族が詳しい説明を医療者から聞く意向を持っているかどうかの確認は、患者本人からしていただくのが原則であろうと考えられます。
Q6:本人の体調が悪く配偶者が代筆する場合、カルテへその旨の記録、または同意書に代筆出ることを残すことは必要でしょうか?
A6:カルテと同意書の両方に、配偶者が代筆したという記録は残してください。
Q7:未発症血縁者が受けた病的バリアント確認検査前の遺伝カウンセリングも、告知事項の診療日数に該当しますか?
A7:保険会社の申告書によって異なりますが、「医師による診察」の日数の申告を求めている場合には、遺伝カウンセリングに医師が関わっていれば、告知すべき診療日数に該当しますが、医師と話し合っていない遺伝カウンセリングは対象外だと考えられます。

5.がん遺伝子パネル検査の概略(木下一郎先生)

Q1:患者さんで今までに患者さんの判断で丸山ワクチン等の補完代替療法を行ってきた方は、がん遺伝子パネル検査を受けることができますか。もしエキスパートパネルで治験の提案があったとき、エントリーに制約がありますか。
A1:がん遺伝子パネル検査に制約はありませんが、治験ついてはエントリーに制約がある場合があります。
Q2:検査の実施時期が早いと判断され、保険を切られることを懸念し、検査実施時期が遅くなってしまうとのお話を聞きます。具体的には、最終ラインに入るまでは、検査を提出しにくい、とのことです。検査の提出時期については、主治医の判断はレセプトへの症状詳記等を尊重してもらえるのでしょうか。
A2:診療報酬算定の留意事項と3学会ガイダンスの推奨を参考に提出し、懸念があった場合はレセプトへの症状詳記を記載するのが良いと思います。どの程度認められるかはケースバイケースと思います。
Q3:診療報酬の算定は、入院中でも可能ですか。DPCの関係から、外来診察時になるのでしょうか。
A3:DPCの病院に入院した場合は、診療報酬は算定できません。
Q4:基礎的な質問ですが、検査項目数によって必要なDNAの量は変わりますか。
A4:検査項目数で決まってはいませんが、パネル毎に必要量が示されています。
Q5:CGPのリキッドバイオプシーが将来的に保険適用となった場合には、腫瘍細胞を使用したCGPが行われた後の検査として位置づけられるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。採血のタイミングについてですが、抗がん剤投与中の場合、どのタイミングだと検出しやすくなるのでしょうか。
A5:組織検体が入手困難な患者にも適用となる可能性があると思います。治療中の患者については、腫瘍進行した際が適切なタイミングと思われますが、保険償還時の適用条件を確認する必要があります。
Q6:スライドp.25に関して①~③に同意がない場合、検査はできなくなるのですか。すべての項目での同意が必要ですか(例えば、③のみ同意しない場合でも検査は行われるか 等)。
A6:同意がなくても検査は可能ですが、同意が得られなかったことを診療録と管理簿に記載する必要があります。
Q7:リキッドバイオプシーの感度、特異度いかがでしょうか。
A7:真の陽性、陰性が不明のため、正確な感度と特異度は算出できませんが、非小細胞肺癌の主なドライバー遺伝子変異について、組織検体を用いた標準的な検査をreferenceとした場合のpositive percent agreement(感度に相当)は70-100%、negative percent agreement(特異度に相当)は90-100%程度と報告されています。
Q8:F1CDxをコンパニオン診断薬として算定し、標準治療を行った後に、エキスパートパネルを行い、48000点を取るという運用は可能でしょうか。
A8:可能です。
Q9:F1CDxでは検体の分解度が確認されないため、新たな検体の入手が難しい患者さんでは古い検体の場合はF1CDxに出す傾向があります。得られた検査結果に制限があると考えるべきしょうか。
A9:特に3年以上保管された検体では、検査の成功率の低下に加え、検査結果の偽陽性の可能性にも注意する必要があります。
Q10:CGPの結果説明時に当該患者が死亡していて加算できないケースは、実臨床上、現在結構あるものなのでしょうか。
A10:私達の施設で2, 3%あります。
Q11:病状的(高齢、数か月後には病状悪化が予測されるなど)に医師はパネル検査をするメリットがないと判断したが、患者がパネル検査を強く希望した場合は、パネル検査はしないといけないものでしょうか。
A11:診療報酬算定の留意事項の「関連学会の化学療法に関するガイドライン等に基づき、全身状態及び臓器機能等から、本検査施行後に化学療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断した者に対して実施する場合に限り算定できる」に従う必要があります。

6.がん遺伝子パネル検査のレポートの読み方と結果の説明(向原徹先生)

Q1:エキスパートパネルで薬剤師は何をしていますか。存在意義はありますか。
A1:当院のエキスパートパネルでは、アノテーターが用意した報告書案を添削するかたちで、報告書の書記をしてもらっています。薬剤師でないといけない、という訳ではないかもしれませんが、かなりのスピードの議論についていかなければならないので、議論の内容が理解できないと務まらないと思います。また、当院での治験のupdateされた情報を薬剤師が把握してくれている場合もあるので、その点の情報提供をいただいています。
Q2:amplificationとはなんですか。
A2:遺伝子の増幅のことをいいます。コピー数が増加し、できあがりのタンパク質が量的に増える状態にあります。
Q3:患者の体調が悪化し、結果開示に受診が困難な場合(他院に入院した、体調不良で遠方で来院困難など)、結果を伝えてよいとしている家族が、患者の保険証を持参し、代わりに説明し、診療報酬を算定することはできますか?また患者ではない家族に説明するという選択は自施設内の検討のみで行ってよいでしょうか。今後、遠方に住まれている患者に対して、受診が困難な場合、テレカウンセリングでも結果開示が可能となるようなことは期待できますか。
A3:患者から結果を伝えてよいと文書で同意のえられている家族が受診された場合は、保険算定は可能と考えています。患者からの文書同意がない方には患者抜きでの説明は不可で、算定ももちろん不可だと思います。遠隔診療での説明は、今後可能になるかもしれません。
Q4:OncoKB ClinVarの活用方法、違いについて教えて下さい。
A4:活用方法としては、遺伝子変異の生物学的な意義が不明であったり、治療学的な意義が、FoudationOneの説明文や、C-CATレポートで十分でないと感じられたりしたときに、参照します。OncoKBやCIViCは治療学的な意義を調べる(どのお薬に関してどの程度のエビデンスがあるか)のに向いていて、ClinVarは生物学的な意義を調べる(遺伝子変異がpathogenicかどうか)のに向いていると思います。
Q5:エキスパートパネルで最終的に推奨治療はないとなった際に患者は、今後、医療の進歩で推奨治療が出てくるかもしれないと言い、どのくらい後に(例えば半年後、一年後)、医師にまた治療はないかと確認した方がよいですか、と質問を受けたことがあり、回答に困りました。基本的には、今の時点でマッチする治療法がないということは”もう今後もマッチする治療はないという事実”という理解でよいでしょうか。その場合、どう伝えるのが良いですか。
A5:確かに今後有望なお薬がでてくる可能性はあります。同様の質問を受けることも多いですが、「有望なお薬は急にでてくる訳ではなくて、半年とか1年前にはそういうお薬の存在は耳に入っていることがほとんどです。あなたの遺伝子変異にあうようなお薬は今のところでてくるとの情報はありません。」というような話をしています。何か月毎というのは難しいですが、敢えていうと半年毎くらいでしょうか。一つの治験の話が病院に持ち込まれて始まるまでにそれくらいかかるためです。自施設の患者ではない場合には、当院の治験情報のサイトや、臨床試験ポータルを紹介しています。
Q6:変異とドメインの位置、機能への影響の確認に有用なDBがございましたら、ご教示ください。
A6:個人的には、JAX CKBを好んで使っています。https://ckb.jax.org/
Q7:小杉班リストの「開示推奨度」「Germline testの必要性」2項目の関係、をどのように考えればよろしいでしょうか。
A7:基本的な考え方として、ゲノム情報の開示についての考え方は、「開示することで患者・家族の医療、及び健康管理のために適切に役立てる」ことを目的としています。小杉班では生殖細胞系列バリアントの情報は「知ることのメリットが大きい場合がある」という前提の元で、開示推奨度を4段階に分けています。
その上で、がん遺伝子パネル検査の結果、担当医が開示すべき判断した遺伝子に病的バリアントが認められた場合、そのバリアントが体細胞由来か生殖細胞系列由来かを確認する検査が必要となる場合があります。
すなわち「開示推奨度」と「Germline testの必要性」の2項目は
① がん遺伝子パネル検査の結果、病的バリアントが同定された
② その遺伝子が自施設が定めた開示推奨遺伝子に該当するか(*)
③ 生殖細胞系列由来か否かを確認するために遺伝学的検査が必要であれば施行するという位置づけになります。
*がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院は、厚労省への施設認定申請の際に、自施設の開示対象遺伝子のポリシーを提出していますので、自施設のものを一度ご確認下さい。
Q8:エキスパートパネルで、見解の統一が得られないケースは、多くあるのでしょうか。
A8:エキスパートパネルの最初のほうで十分に議論を深めておけば、その後同様のケースがでたときにそれを踏襲できます。そのため、ある程度成熟したエキスパートパネルでは統一見解がえられない、ということはほとんどないと思います。
Q9:NCCオンコパネルでのTMB-Hは、3つのTMB表示の中のどれをとって判断していますか。
A9:領域全体というものを採用しています。

7.がん遺伝子パネル検査結果に基づく治療(伊東守先生)

Q1:治療標的となり得る遺伝子変異を検出したとしても治療に結び付かないのはどのような理由が多いですか。
A1:治療の出口として臨床試験が挙げられることが多いですが、1.効果が見込まれる薬剤を使用した臨床試験が実施されていない・適格外である、2.臨床試験実施施設が遠方でありアクセスできない、といった例が多いと思います。
Q2:「遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく複数の分子標的治療に関する患者申出療養(以下BELIEVE)」の対象となる遺伝子変異について、施設によって選定基準が様々だと聞いたことがあります。今後、実施施設間で対象遺伝子変異を統一するような取り組みはあるのでしょうか。
A2:現時点では対象遺伝子変異を統一する予定はありません。特にバイオマーカーとしてのエビデンスが未成熟・不十分な遺伝子変異に対する試験薬の使用については、施設間でのコンセンサスを得ることが困難であるという側面もあります。今のところはプロトコールで制限をかけず、各施設のエキスパートパネルの判断に委ねる方針となっておりますので、試験薬の使用についてはエキスパートパネルでぜひ議論して頂けたらと思います。
Q3:乳癌胃癌以外の癌でERBB2の増幅を認めた場合、BELIEVEでトラスツズマブ単剤を投与しながら、原疾患に保険承認されている抗がん剤を併用することは認められるでしょうか。
A3:「薬剤添付文書において、他の医薬品との併用が認められている場合であっても、本研究においては、細胞障害性化学療法薬との併用は許容されない。」と定められており、試験薬での単独治療(この場合トラスツズマブ単独投与)のみ認められています。
Q4:例題③で「自由診療によりがん遺伝子パネル検査を実施した」とありますが、標準治療が終了した患者に対してパネル検査が保険適応となっている現状において、自由診療でパネル検査を実施するという状況はどういうどういう場合に発生するのでしょうか。
A4:保険診療でがん遺伝子パネル検査が実施できるようになり、自由診療を希望される患者さんは確かに減少していると思います。自由診療を希望される状況として、以下のような場合が考えられます。
1. 標準治療終了前に検査実施したいと希望された場合
2. 組織標本の採取が困難で、自由診療で血液検体によるがん遺伝子パネル検査(リキッドバイオプシー)を希望された場合
3. 保険診療のがん遺伝子パネル検査と比較して、自由診療のパネル検査の性能が異なり(解析遺伝子数が多いなど)、それを患者さんが希望された場合
Q5:自由診療のがん遺伝子パネル検査結果で、肺がんなどに保険適用のある薬剤の効果が示唆された場合、使用は可能でしょうか。
A5:保険診療では肺癌に対して承認された薬剤を肺癌以外に使用することはできません。また、自由診療のがん遺伝子パネル検査をもってBELIEVEに参加することも出来ません。その患者さんも参加可能なその薬剤を使用した臨床試験を探すことが、現実的な手段になると考えられます。
Q6:変異陽性の癌に対して自費で国内承認薬を使用したい患者さんがいたのですが、未承認の薬品を院内で使用する場合の未承認新規薬品委員会などにかける必要などがある施設もあると思うのですが、そのような選択肢の時に速やかに使用をする工夫や仕組みは院内にございますか。
A6:国内既承認薬の適応外使用が望まれる状況は当院でも経験します。そのような状況に対応する倫理委員会を当院でも実施していますが、治療提供は難しいのが現状です。今後の課題であり、患者申出療養制度がより使用しやすくなるなど、解決されることを期待しています。

8.CGMCがおこなう業務内容について(武田祐子先生)

Q1:エキスパートパネルでコーディネーターや看護師が参加する意義について教えてください。
A1:がんパネル検査は治療方針検討の一環として行われるので、受検のプロセスに関わっているコーディネーターや看護師が参加することは、患者背景を共有することができ、方針の検討に有用です。また、EPに参加することにより、コーディネーターや看護師が最新の知見に触れ学習する機会となり、その後患者が意思決定していくときの支援に有用な情報として活用できます。
Q2:海外に行ってでも有効な治療(治験)を受けたいと訴えられた場合の対応を教えてください。
A2:治療選択のために行われる検査として、検査前にその結果を使って、どのような治療をどこまで行うことを考えているのか、患者が主治医と事前に話し合っておくことが大切です。コーディネーターとしてもそのことをサポートできるように、事前説明などの機会に患者の意向を確認し、必要に応じて主治医との面談を設定します。
Q3:結果説明時における説明内容を詳述した文書の交付について教えてください。
A3:結果説明時には、医師が文書を用いて治療方針等について説明することにより、診療報酬が認められます(診療報酬算定の留意事項)。統一された書式はありません。
Q4:検査時に適応する治験等がない場合、時期をおいて新たに始まった治験の情報は提供されるでしょうか。
A4:情報提供することもありますが、患者の状況により判断されます。
Q5:がんゲノム医療コーディネーターとして活動する上で、臨床検査技師や薬剤師の実際の活動例が知りたいです。
A5:上本先生講義内容を参照してください。
Q6:がんゲノム医療コーディネーターがいる最も大きな意義・意味はなにでしょうか。
A6:がんパネル検査の受検を検討する患者が、十分な理解のもとに意思決定できることを支援できます。また、受検からその後の治療方針の決定について、患者の納得が得られます。これらにより、がんパネル検査が円滑に実施できます。
Q7:がんゲノム医療コーディネーターの役割や介入範囲は、施設ごとに異なりますか。担当業務と兼務していくのは負担が大きいです。
A7:がんゲノム医療コーディネーターのベースとなる職種によっても異なると考えますが、施設としてどのような役割期待があるのか、そのためにどのようなチーム構成とするのかによります。多くは兼任でありますが、対象者が増加する中では、業務の状況が客観的に把握できるデータのもとに施設で検討していくことが必要になると考えます。
Q8:CGMCからCGMC以外のコメディカルへの啓発等の取り組みについて教えてください。
A8:施設により異なりますが、がんパネル検査全体の流れなどの講習会、ベースとなる職種に対して期待する役割などについて教育が行われています。
Q9:患者との関わりにおいて大切にしているポイントを教えてください。
A9:患者自身ががん治療に対してどのような考えを持っているのかについて、気づく、あるいは確認できるような関わり方は大切です。
Q10:患者の遺伝情報に関する記録についての管理を教えてください。
A10:遺伝情報に関わる情報は慎重に扱われてきましたが、遺伝情報が治療に直結する現状においては、遺伝医療の専門部署だけではなく、がん医療に携わる医療者が共有できることが望ましいです。

9.CGMCがおこなう業務内容について(CGMC研修会修了者より)(上本剛先生)

Q1:貴院ではCGMCは基本的に1患者に一人なのでしょうか。もしくは、複数人で担当するのですか。当院ではCGMCはおらず、基本的には分業制ですので、参考にしたいです。また、CGMCはプレ面談などを行わないのでしょうか。
A1:基本的には1対応に1人で対応していますので、検査前と後で担当が異なることがあります。プレ面談は実施していません。
Q2:ミーティングを行っていること、とても大事だと思いますが、当院ではまだそのような体制は整っていません。情報共有や事例検討ではどのような患者さんが対象となりどのようなことを話し合いされているのか教えてください。
A2:各担当が共有したい事例と実際に問題になった事例を中心に他の担当者であればどういった対応をするのか、テンプレートの改訂が必要かなどについて相談しています。場合によっては医師に助言もいただきます。
Q3:結果説明時に、他院入院中の場合はどのように対応されていますか。
A3:DPC対象病院に入院中の患者やその家族に対して説明を行った場合は、CGPの診療報酬は算定できません。結果説明時に他院入院中の場合は、退院したら受診いただいてご説明すること、入院中でもご家族に先にお話することができることをお伝えしています。医師が入院先の病院と調整をおこなったケースもあります。
Q4:他院入院中の患者さんの場合に、他院の看護スタッフなどと情報共有など連携されることはありますか(結果説明後の患者さんの状況など)。
A4:ありません。医師同士の情報共有までになります。
Q5:検査前の補助説明時に家族歴の聴取をされていますが、この時、家系図は作成されていますでしょうか。
A5:作成に必要な範囲で情報を聴取していますが、作成はしていません。
Q6:①薬剤師業務のどの程度の割合をCGMCに関する業務に割いていますか。どのような業務と兼務していますか。②薬剤師の業務範囲、臨床試験情報の収集について具体的に教えて下さい。
A6:①治験薬管理業務、当院で行っている治験に関する問い合わせ対応業務と兼務しています。別の薬剤師は病棟業務と兼務しています。CGMCの補助説明はそれぞれ週1日担当しています。各曜日に担当者が2名いますが、看護師が補助説明の主担当なので、薬剤師としては1件/日に満たない程度の補助説明を実施しています。
②薬剤師の業務としては補助説明の他にはEPの運営補助(EP中のカルテ操作や記録作成等)を行っています。CGMCではありませんが、他の薬剤師は患者申出療養で使用している薬剤の管理や調剤、患者への指導も実施しています。
臨床試験情報については臨床研究情報ポータルサイトとCinicalTrials.govを使用して収集しています。検索項目は薬剤名とがん種を使用することが多いです。試験毎のページの更新日を確認し状況に応じて企業や施設に実施状況の問い合わせを行います。当院では多くの治験を実施している関係で当院で実施している治験の情報提供をすることが多く他院等への問い合わせの機会は多くありません。
Q7:薬剤師としてCGMC業務を行う利点と、職能を活かし今後こんなこともできるのではないかなどのご意見があればご教授ください。
A7:薬剤師がCGMC業務を行う利点としては治療への理解度が比較的高い点が挙げられると思います。また薬剤の適正使用への貢献が重要なので、院内の委員会への参加や適応外使用時の情報提供などを行っています。治験以外の治療を受ける患者は少ないですが、当院では患者申出療養を利用した適応外使用に関して外来担当の薬剤師が薬剤指導を実施していますので担当部署への情報提供も行っています。
Q8:CGMCが介入することは患者さん・家族にとっては助かると思います。CGMCが介入することは、算定に繋がるとかありますか。
A8:CGMCの業務に対する加算はありません。
Q9:多職種のCGMCがいることでの「難しい」点はありますか。
A9:専門外来がありませんので、同時に複数の補助説明が発生する場合がありますが、それぞれ兼務ですので、タイミングによっては少しお待たせする場合があります。各職種で考え方や常識が異なる点も挙げられると思います。
Q10:業務共通化のためのSOPを参考にさせて頂きたいのですが、提示可能でしょうか。
A10:公開していません。連携病院には公開しています。
Q11:CGMCから患者への説明時、家族も同席することが多いと思いますが、家族が同席すると本人の意向が十分に把握できないという状況が発生しうると思います。ご家族の意向が強く本人の意向がはっきりしないという際にはどのように対応しているか、対応の工夫を教えてください。
A11:本人の意向がわかりにくい場合は別々にお話を聞く場合もあります。
Q12:検体の提出や病歴の登録は主治医ではなく、CGMCの方がされているのでしょうか。
A12:検体の提出は臨床検査技師CGMCが提出、病歴の登録は主治医が実施しています。
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